現在、住宅業界ではウッドショックという言葉が飛び通っています。聞いたことはあるけど意味はよくわからないという方も多いのではないでしょうか?そこで、今回はウッドショックとはいったいどういうものなのかを詳しく見ていきたいと思います!
そもそもウッドショックって何?
ウッドショックとは輸入木材価格の高騰のことを指し、かつてのオイルショックになぞらえて名付けられた言葉で、日本への輸入材が入って来なくなる貿易摩擦の総称です。
実はあまり知られていないのですが、過去にも2度ウッドショックがありました。1度目は1990年代以降、アメリカで絶滅危惧種のフクロウ保護のため森林伐採の規制が進み、木材の供給不足で発生。2度目は2008年のリーマン・ショックが起きる直前、好景気で住宅の建設ラッシュとなり木材の価格が上昇し発生。そして、今回は新型コロナの影響です。第3のウッドショックとも呼ばれています。
日本の木材の自給率は4割弱程度となっており、6割強を輸入材に頼っていますので、今まさに大きな影響を受けているのです。特に構造材のほとんどが木材である住宅業界の影響は深刻といえる状況なのです。
なぜウッドショックが起こったの?
ウッドショックが起きた原因としてはアメリカや中国の情勢変化が挙げられます。アメリカでは日本と同様に在宅・リモートワークが急激に増えました。その結果、空前の別荘ブームや住宅の建築やリフォームが盛んに行われるようになり、木材需要が一気に高まったのです。また、新型コロナウイルスの影響でアメリカ国内の経済が回らなくなったことも挙げられます。そんな中、世界最大の木材輸入国である中国が、コロナ後の木材需要を復活させ高値となった木材を世界中から買い集め木材価格の高騰に拍車をかけたのです。
そして日本国内でも住宅業界の中ではローコストをうたうハウスメーカーが台頭してきたことで、安価な輸入木材の依存度が一層高くなっているという背景もあり、世界的に木材の取り合いが起きてしまい、ウッドショックが生じてしまったといわれています。
また、記憶に新しい2021年3月に起きた「スエズ運河大型コンテナ船座礁事故」の影響で、ますます日本へのコンテナ輸送の遅れが心配されています。例え日本が木材を購入できたとしても、コンテナ不足で日本まで木材を運べない状況が起こりえるということもあり、より木材の供給が不安定となっているのです。
ウッドショックが及ぼす影響は?
ウッドショックでは、特に米松やレッドウッド集成材の価格高騰が住宅市場に影響を与えています。それらの木材は、木造住宅の主に梁材(柱と柱を繋ぐ横架材のこと)に利用されています。梁には構造的に強度の強い材料、もしくは樹齢の長い太い木材が求められますが、国産の木材は梁に適したものが少ないため、梁の多くは輸入材に頼っている状況にあるのです。梁がなければ当然お家は建てられないので高い価格でも購入しなければならず、住宅価格も合わせて高くなる、もしくは金額が合わず調達できないという工務店も増えてくると想定できます。一方で、主に柱に用いられるスギやヒノキについては国産材でも調達しやすいことから、ウッドショックの影響は比較的少ないものとされています。
その他では、同じく木材をよく使う家具・インテリア業界にもその影響はじわじわ広がりつつあります。すでに店頭に並び売られているものについては問題ないと思いますが、これから加工されるものについては価格の値上げを余儀なくされているところもあるそうです。裏を返せば、消費者にとってはまさに今が家具の購入の絶好のタイミングともいえるかもしれませんね。
なぜ国産材を使わないの?
それでは国産の木材を使えばいいのでは?と思われるかもしれません。実際に日本は森林面積が多い国でもあり木材自体は多く採れるようにも見えますが、国産材への切り替えは簡単には進められないそうです。理由として以下の3つが挙げられます。
◆1つ目の理由
今の住宅メーカーの建物設計は輸入材の強度を前提に設計されているところが多くあり、国産材に切り替えようとすると建物設計から変えていかなければならないことになります。設計が変われば使用する木材の量も変わってくることから、国産材に切り替えたとしてもコストが安くなるとは限りません。
◆2つ目の理由
急に国産材に切り替えようとしても供給体制が追い付かないという現状があります。担い手の減少による国内の林業の衰退が深刻化しているからです。仮に柱で使うスギやヒノキが供給できたとしても、肝心の「梁」で使うカラマツなどを市場で求められる量まですぐに供給することができません。
◆3つ目の理由
林業は長期にわたる計画的な生産体制が必要だからです。木材は、植林してから市場に出るまで30年以上の時間が必要となるため、いったん急激に伐採が行われるとすぐには回復できません。その間に木材は徐々に海外の安価な輸入材に頼るようになり、国内の森林が回復される前に林業従事者の高齢化も進んでしまいます。林業は30~50年程度のスパンで商品を出す産業であるため、ウッドショックのような一時的な現象に対し生産者側の即座な対応ができないのです。今から慌てて梁になる木材を植林したところで、ウッドショックが収まってしまえば、また国産材は輸入材に価格で負けてしまうことになります。
ウッドショックの今後の見通しは?
正直なところ、コロナの終息がいつになるのか分からないのと同じように、明確に「いつ終わる」とはいえないのもウッドショックのいやなところではあります。アメリカや中国での、リフォーム・新築事業が盛んになっているという状況が永遠に続くことはないと考えられるため、どこかのタイミングで日本での木材不足の現状も変わってくるだろうと思われます。また日本での国産材の流通を改善しようと始まった日本木造分譲住宅協会のような働きが軌道に乗れば、国内でも木材が今よりスムーズに確保できるようになるという期待もあります。
余計な楽観視はあまり良くありませんが、今ほど悪い状況は長くは続かないのではないかという見方もあるようです。新型コロナのワクチン接種も進んでいくわけですから、むしろ今がどん底といえる状況なのではないかとも思えます。必ずしも来年には良くなりますよ!とは断言できない状況ではありますが、「何年も続く、よりひどくなる」という事はそうそうないのではないかと私は考えています
少しでも早くウッドショック、そして世界的に猛威を振るう新型コロナウイルスの一連の騒ぎが落ち着いて平常に戻ることを切に願います。
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