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売れない土地を相続してしまった場合

「売れない土地を相続してしまった場合どうしたらいいのか?」

現行の法律上、土地の所有権を放棄することはできません。

 

「将来的に親の畑や山を相続するかもしれない」と思う方にはぜひ知っていてほしいのですが、山や畑は基本あまり売れません。

「じゃあ(相続した)自分もいらないよ」となったとしても、どうしても固定資産税がかかります。また、山林は放置すると雑草が生い茂ってしまい、近所の方からクレームが入ってしまうことも……。

こういった事情から、「相続した山や畑は売れないしお金がかかるから登記しない」という選択肢をとる方も多く出てきました。近年ではこうした方が続出したことによって、「所有者不明土地問題」がどんどん拡大しています。

これを受け、来年(令和6年4月1日)より相続登記が義務化されることになりました。

しかし、相続登記を行うにあたっては費用(不動産評価額の0.4%の登録免許税)がかかります。また、戸籍の収集にも時間を要します。さらに、相続人全員と連絡が取れなければ遺産分割協議もまとまりません。

こうなると、相続登記をしたくないと思ってしまうのも無理はありません。

しかし、不要な土地を相続登記しないということはメリット以上にデメリットのほうが多いのです。

・相続登記を放置・拒否する「デメリット」

巷には「不要な土地は相続登記をしなければ固定資産税がかからない」という話もありますが、それは間違いです。登記をする・しないにかかわらず、固定資産税や管理費はかかります。

登記をしなければ、登記費用や司法書士報酬がかかりませんし、手間もかかりません。これはメリットといえます。

その一方で、相続登記が義務化されたのにもかかわらず登記をしないとなれば、10万円以下の過料の対象になります。また、長期相続登記未了により「相続関係の複雑化」が起きることも大きなデメリットです。

相続登記を放置するとどんどん相続人が増えてしまい、相続人を追い切れない状態になってしまいます。すると、その土地は宙に浮いたまま立ち行かないものになりますが、その“立ち行かない土地”に急な需要が発生すると、対応することができません。

また、他の相続人が「相続登記がまとまらない」として勝手に登記売却した場合、相続問題に「持分買取業者」も介入することになります。すると、ますます相続登記を完了させることが難しくなってしまうのです。

不要な土地の処分方法は、大きく分けて4つあります。1つ目は、「自治体へ寄付をする」こと。2つ目は、「相続発生時に放棄する」こと。そして3つ目は、「不動産引受業者に引き取ってもらう」ことです。また、4つ目の選択肢として「相続土地国庫帰属制度」という新しい制度を利用する方法もあります。

まず「自治体に寄付する」という方法ですが、これは実際には99%不可能だと考えていただきたいです。HPなどでこの方法を紹介されているところが多くありますが、実務上は「寄付したい」と申し出ても自治体が寄付を受け入れることはありません。

次に、「相続発生時に放棄する」という方法です。これを実行した場合、いらない土地だけでなく現金など全財産を放棄する必要があるため注意が必要です。

それでもいいのであればこの方法がいちばんかとは思いますが、「相続人全員が相続放棄する」となった場合には“いちばん最後に放棄する人”が管理責任を負うことになりますので、円満解決とはいきません。

3つ目は、「不動産引受業者に引き取ってもらう」という方法です。現行上はこれがいちばん手堅い方法といわれています。

ただし、実際には、価値がない不動産を引き取ってくれる業者を探すのは大変ですし、高額な引取料がかかる場合もあります。とはいえ、「10年分の固定資産税を払ってでも引き取ってほしい」という方は少なくありませんから、現行の処分方法としてはこの方法が現実的でしょう。

4.「相続土地国庫帰属制度」を利用する

こういった問題のために、不要な土地を国が引き取ってくれる「相続土地国庫帰属制度」が今年(令和5年)4月27日からスタートしました。しかし、利用するには相当ハードルが高いものとなっています。

1.土地の上に建物がない

2.境界が明確である(山林などは厳しい)

3.土壌汚染がない

4.通路などではない

5.担保権や使用権がない

6.管理が難しくない(山林や古家は厳しい)

上記6つなどの条件を満たし、法務大臣の承認が得られる場合には所有権を手放すことが可能です。

とはいえ、境界が明確でない山林などは条件に満たず、また承認が通っても10年分の管理費をあらかじめ納める必要があるなど、利用できるのであればぜひ利用していただきたいところですが、なかなか厳しい制度となっています。

 

不要な土地とはいえ、相続登記の放置はメリット以上にデメリットのほうが大きいです。ぜひご自身の状況に当てはめ、心当たりがある方は相続した場合どうするか検討してみていただければと思います。

category : 不動産について | posted at 2023.6.23
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