台風などによる相次ぐ大規模な浸水被害を防ぐため、今「グリーンインフラ」が注目されています。
「グリーンインフラ」とは、堤防やダムなどの人工の構造物だけに頼るのではなく、自然環境が持つ力を防災や減災に活用しようという考え方です。
例えば京都市では、洪水対策として雨水をためたり、浸透させたりする機能を持った植樹帯を整備。また、福島県の沿岸部でも震災の教訓から、津波から命を守る海岸防災林を植樹するなど、各地で「グリーンインフラ」の取り組みが進んでいます。
特に福島・郡山市が検討しているのが、治水の面。“治水”とは、大雨の際に上流から大量に流れてくる水をダムなどで一時的にためこみ、下流に流れる量を調整し、洪水を防ぐというものです。
そこで、水をためられる田んぼの機能を治水対策に応用することを目指しています。
田んぼから排水路へ水を放流する際に、水の量を抑えることができる調整板を使用します。この板を設置すると、豪雨が起こった時に放流する水の量を抑えることができるので、田んぼに貯水することができます。
大雨が降った時に、まともに排水をすれば、下流域で浸水被害を引き起こしてしまうということで、調整板を使って、降った雨を一時的に貯留して、時間差をつけて排水し、下流域の浸水被害を軽減する狙いで設置したものです。
田んぼの水を下流などに流す出口部分に、水の量をコントロールできる調整板を取り付けることで、一時的に雨水を貯留。ゆっくりと流すことで、水路や河川の急激な水位上昇を防ぎます。
堤防の整備、あるいは遊水地の用地確保など、時間がかかる点を補うという意味で、田んぼダムは期待できるという考え方になっています。
この「田んぼダム」。郡山市によると、台風などの際に水をためる期間は、長くても1日程度ということで、稲の成長や収穫に影響はないということです。
田んぼに降った雨は、水として田んぼに貯留され、川に流すことを少し遅らせることによって、下流への影響を少なくすることができます。例えば、福島県全ての田んぼを「田んぼダム」にすると約2億トンを貯められるそうです。単純計算で、東京ドーム151杯分。部分的な取り組みしかできないので、大きな河川にはあまり効果はありませんが、小さな川ではちょっとした雨では冠水させない効果があるそうです。
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