「賃貸か持ち家か」の議論は、さまざまなメディアで取り上げられています。
しかし、70歳以上の高齢者になると、賃貸住宅を借りる難易度は急激に上がります。
では、持ち家なら大丈夫でしょうか?
持ち家は、ローンを完済すれば確かに家賃こそかかりませんが、家の補修費用や固定資産税は必要です。ある程度の築年数になれば、屋根や外壁を補修しなければならないこともあるでしょう。
何にいくらぐらいかかるのか具体的にイメージをして、その分のお金を貯めておかなければ、持ち家に住み続けるのも大変です。
想定外の災害が毎年のように全国各地で起こっていますから、自宅が災害に遭うことも想定しておいたほうがいいでしょう。台風や地震で持ち家が被害を受けた場合、その補修費は保険で全額賄えるのか。そもそも保険に入っていないなら、入ることを検討する必要もあります。
築年数も問題です。自分が平均寿命まで生きるとすれば、その時、持ち家は築何年でしょうか。現実問題として、住み続けられる建物かどうかはそこまでのメンテナンス次第でもあるでしょう。必然的に、それなりの費用がかかることを把握しておくべきです。
要は、持ち家だからといって安心はできないということです。考えないといけないことは、持ち家でもいろいろとあります。
2019年に「老後2000万円問題」が話題になりました。人によって、死ぬまでにかかるお金は全然違います。賃貸か持ち家かでも違いますし、住んでいる場所、既婚か独身か、子どもの有無も関係してきます。
自分の状況をふまえた上で、老後にどんな暮らしをしたいかを個々人が具体的に考え、それにかかる費用を準備しておかなければなりません。
「持ち家があるからいざとなったら売れば大丈夫」と思っていても、考えていた価格で売れるとは限りません。買った値段より高く売れるとは、限らないのです。
頭金を少なくして無理なローンを組んで買ってしまうと、売却しようと思った時に、ローンの残債以上で売れないことも多々あります。金利が低いから借りるのではなく、「頭金はあるけれど金利が安いから借りておこう」くらいの余裕がないと、アクシデントがあったときに立ち行かなくなります。
ローン期間中、ずっと同じ収入が得られる保証は、誰にもありません。病気になって働けなくなるかもしれませんし、転職を余儀なくされるかもしれません。家族構成が変わってしまい、世帯収入が減ることだってあり得ることです。
また、若い頃には何とも思わない「階段」も、高齢者になると苦痛になる日がきます。陽当たりのいい2階リビングも、高齢になると住みづらい家になってしまいます。階段を下りていかねばならないことから、出不精になってしまい認知機能の低下につながります。
また、介護が始まるとリビングにベッドを置くことが多いのですが、1階の方が介護の人が出入りしやすくて便利です。
若い時に好む家が、高齢者に住みやすいとは限らないということです。
でも家を買う時に、家族の人数が減ることや自分が高齢になる時のことをイメージできる人はほとんどいないでしょう。そうであるならば、ライフスタイルに合わせて気軽に転居できる賃貸物件も、選択肢としては悪くありません。
持ち家にしろ、賃貸にしろ、当たり前のことかもしれませんが、とにかく経済力をつけることです。
やはり、どちらがいいとは一概には言えませんが、家族構成も含めまだ流動的な間は、ライフスタイルに合わせて賃貸物件に住む。あるいは、家賃レベルで買える安価な中古物件を購入して、生活スタイルに合わせて住み替えをしていくのもよいのではないでしょうか。
少なくとも長期スパンで住むことを前提とした高額な物件を、買った額より確実に高く売れる確信が持てないまま目一杯のローンを組んでの購入はお勧めできません。
人生の後半戦、自分の年金額や貯金額、生活スタイルと将来的な収入がはっきり見えたころ、高齢者が住むのに心地よい物件を購入する、建てる、リノベーションをする、早めに借りるというのがよいと考えています。
終の棲家を探すときに、1つ注意してほしいことがあります。それは引っ越し先が10年、20年で取り壊しや建て替えにならないか、という点です。最後に住む家は、自分の寿命より長持ちしそうな物件を選ぶようにしてください。
住むエリアで「家」にかかる費用も大きく変わるので、自分のセカンドライフプランは早めから意識しているほうがいいでしょう。
現役時代は仕事が中心なのでアクセス重視ですが、毎日通勤しないのであれば、スーパーや病院など生活の利便性が重要になってきます。
試し住みも、賃貸物件なら気軽です。子どもの校区なんて考えなくてよくなった世代ですから、ぜひご自身の「好き」を探してみてください。郊外なら地価も下がるでしょうから、高齢者に快適な平屋を建てやすくなるでしょう。
「おひとりさま」なら、頼れる身内が近くに住んでいる物件を選んだり、身元保証や高齢者サポートなどをしてくれる存在の確保をしたりすることも検討しましょう。自分が認知症になったり、病気になったりしても、すぐに来て対応してくれる存在がいるとなれば、家主側も安心して貸すことができますし、自分自身も心強いはずです。見守りサービスを利用すれば、万が一のときもすぐに見つけてもらえるので事故物件にもなりません。今はそのような事業者もたくさんできているので、サービスの内容を確認しておくことが重要です。
経済力や任意後見手続き、見守りなどで、家主側の不安をカバーできます。そこまで備えておけば、貸さない人はいないはずです。
また「UR賃貸住宅」は、平均月収額が月々の家賃額の4倍以上あれば(家賃額6万2500円未満の場合)、年齢は問題になりませんし、保証人も不要で借りられます。礼金、仲介手数料も不要で、契約は自動更新、更新料もなしに住み続けることができます。月収がなくても貯金が月々の家賃額の100倍あるか、家賃を1年分前払いするかのいずれかの条件を満たせば入居できます。
このように賃貸であっても持ち家であっても、お金さえあれば何とかなることばかりです。誰しもが、必ず老いて死にます。生きる基盤である「住」をどうするかを考えることは、「生きる」ことを考えることでもあります。少子高齢化の社会では、とにもかくにもお金を貯めて若いうちから備えておくことが大切です。
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